電磁波関連報道情報(2005年)

<報道情報>  2005(平成17)年
第3世代携帯:基地局急増 住民とのトラブル、全国で多発
 動画のやり取りも可能な第3世代携帯電話(3G)の基地局急増に伴い、住民と携帯電話会社間のトラブルが全国で少なくとも200件以上起きていることが、市民団体「電磁波問題市民研究会」(事務局・千葉県船橋市)の調べで分かった。基地局から放射される3Gのマイクロ波(電磁波の一種)は人体への影響がより強いとの研究報告があり、住民が健康被害を訴えるケースも出ている。このため国に設置規制などを求めようと、京都弁護士会は今月中にも、日本弁護士連合会に要望書を提出する。
 総務省移動通信課によると、基地局は全国に8万5792局(昨年12月現在)ある。設置に関する国の規制はなく、盛岡市など一部自治体が条例などで規制しているが、無秩序に増え続けているのが現状。
 同研究会によると、トラブルは全国42都道府県に広がっており、3Gが普及し始めた02年ごろから急増。熊本市では住民が基地局の撤去を求め、携帯電話会社を提訴(住民側敗訴。控訴審で係争中)。東京都練馬区では、マンション屋上への設置を巡り、住民らが約8600人の署名と陳情書を区議会に提出した。着工時にはもみ合いになる騒ぎになった。
 基地局のマイクロ波について、同省は「環境健康基準値内で人体への問題はない」としている。しかし、長期被ばくの十分な研究データがないうえ、フランスやオランダなどでは人体への影響を示す研究が報告され、世界保健機関(WHO)も08年ごろをめどに新基準値を発表する予定だ。
 電磁波を巡っては、これまで家電製品や送電線なども問題になった。電磁波問題に取り組む弁護士を中心に、京都弁護士会がプロジェクトチームを結成。基地局の設置場所規制や住民への説明会を義務付けるなどの措置を国に提言するよう求める要望書を日本弁護士連合会に提出する。
 同プロジェクト座長の山崎浩一弁護士は「安全性の検証が追いついていない現段階では、基地局の設置場所については慎重な姿勢を取るべきだ」と話している。
<携帯電話基地局>
 携帯電話から出るマイクロ波を受信、中継する役割を果たし、数キロの範囲をカバー。携帯電話端末と定期的に交信するため、基地局自身もマイクロ波を発信している。郊外や住宅地では高さ30〜50メートルの電波鉄塔型、都市部ではマンション、ビル屋上に設置される型が多い。基地局の形状は第2世代までと同じだが、放射される周波数は、第1、第2世代が0.8ギガヘルツ帯と1.5ギガヘルツ帯だったのに対し、3Gは2.0ギガヘルツ帯と、より強力になった。
(2005/3/27:毎日新聞)
同記事 携帯電話:3G基地局が急増 住民とトラブル多発--国に設置規制要望へ
(2005/3/28:毎日新聞)
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携帯電話:第3世代携帯、基地局周辺で「健康被害」 住民苦情、トラブル200件
 ◇京都弁護士会、設置規制要望へ
 動画のやり取りも可能な第3世代携帯電話(3G)の基地局急増に伴い、健康への影響を心配する住民と携帯電話会社間のトラブルが全国で少なくとも200件以上起きていることが、市民団体「電磁波問題市民研究会」(事務局・千葉県船橋市)の調べで分かった。基地局から放射される3Gのマイクロ波(電磁波の一種)は人体への影響がより強いとの研究報告があり、住民が健康被害を訴えるケースも出ている。このため国に設置規制などを求めようと、京都弁護士会は今月中にも、日本弁護士連合会に要望書を提出する。
 ◇自然界にない電磁波−−元京都大講師で「電磁波環境研究所」(京都府宇治市)所長の荻野晃也さんの話
 国際ガイドラインの基準は、短時間の影響のみ考慮して決められた。特に3Gのマイクロ波は自然界にまったくない種類の電磁波で危険性が高い可能性がある。人の生命や健康に悪影響が及ぶ恐れがある場合、科学的証明が不十分でも、防護対策をする「予防原則」の立場から、住宅地や学校、病院周辺からは距離を取るなどの法規制が必要だ。
(2005/3/27:毎日新聞・大阪朝刊)
関連記事 解説:携帯基地周辺で「健康被害」 急がれるルール作り
 携帯電話基地局を巡るトラブルが全国で相次いでいることが明らかになった。マイクロ波の長期被ばくによる人体への影響は、がんや白血病を招くとされる「非熱効果」を含め世界的に議論が分かれており、今後の研究で、安全基準が変わる可能性もある。国は「予防原則」に立ち、住宅地などでの建設を法規制するなど、最悪の事態を回避する努力をすべきだ。
 国の規制がないため、自治体独自で規制するケースも出始めている。盛岡市は03年4月、「原則的に鉄塔型基地局の設置は第1種低層住居専用地域は避けてもらう」などとした条例を施行。東京都国立市なども要綱で、電磁波などの影響が予測される地域住民に事前説明を求めている。福岡市は4月から苦情担当窓口を設置する。
 海外では健康被害を示す報告も出ている。オランダ経済省などは、ボランティアを3G基地局と同じ強さのマイクロ波にさらしたところ、頭痛や吐き気を訴える人が従来の基地局レベルに比べ目立って増えたという研究成果を03年に発表した。
 国は改めて安全性について立証すべきで、その第一歩が独立性の高い研究機関による健康被害の疫学調査だ。欧米では「21世紀の公害」と言われるほど、関心が高い。国内でも積極的に議論し、今や生活に欠かせない携帯電話と共存できるよう、一刻も早いルール作りを求めたい。
(2005/3/27:毎日新聞・大阪朝刊)
携帯基地局周辺の住民 健康被害の予防を 操業差し止め求め提訴
 別府市荘園町に建設されているNTTドコモ九州の携帯電話無線基地局について、周辺住民二十人が二十五日までに、「電磁波により将来、健康被害が発生する恐れがある」として「予防原則」違反を主張し、操業の差し止めを求める訴訟を大分地裁に起こした。
 訴状によると、原告は基地局から周辺二百メートル以内の住民。近くには病院、学校、保育所などが集中し、文教地区となっている。建設中の施設は次世代携帯の中継基地局で、高さ四十メートル。二月中に完成する予定という。
 原告側は、携帯電話の基地局から放出される電磁波による健康被害について、「確定的な判断を下すデータは不足しているが、影響を示唆する報告が相次いでいる。科学的な結論が出るまでの間、被害を最小限にする予防的措置が採用されるべきだ」と指摘。
 「地元への説明会では、安全であるとの説明を繰り返すだけで、住民の不安を解消する努力をしていない」と主張している。
 NTTドコモ九州広報部は「訴状を見ておらず現時点ではコメントできない」としている。
ポイント:予防原則 環境保護についての理念。1992年の国連環境開発会議で採択された「リオ宣言」に盛り込まれた。深刻あるいは回復できない損害がある場合は、完全な科学的根拠がなくても、環境悪化を防止する措置を取らない理由とすべきでない―とされる。
(2005/2/26:大分合同新聞)
携帯電話の放射線量は基準よりかなり低い――フィンランド調査
フィンランド放射線および核安全局の調査によると、人気携帯電話モデルの放射線放出量は欧州の許容基準を大きく下回っている。(ロイター)
 最も人気の携帯電話モデル一部についてフィンランドで調査を行ったところ、これら携帯電話の放出する放射線量は許容上限を大幅に下回り、メーカー各社が公表しているデータとほぼ一致することが判明した。
 今回のフィンランド放射線および核安全局(STUK)の年次調査では、同国のNokia、米Motorola、韓国のSamsung Electronicsなどの端末メーカーの新モデル16機種が対象となった。
 2003年に行われた最初の調査では、12機種が調査対象となった。
 携帯電話は基本的に、電波を介して信号を送受信する小型無線機と言える。
 調査の結果、これら対象端末はすべて、電磁波吸収率(SAR:端末利用者の頭部に吸収される熱の量を測る)が欧州の許容基準である1キログラム当たり2ワットを大きく下回ることが分かった。
 このレベルなら頭部の組織の温度が大幅に上がることはないし、その他の悪影響も科学的に立証されなかったとSTUKは述べている。同局によると、これまでに調べた28機種はすべて、SARのレベルが1キログラム当たり0.45〜1.12ワットだったという。
 一部の消費者団体は、携帯電話の利用が頭痛や腫瘍などの問題を引き起こす可能性があると懸念しているが、携帯電話利用による健康への影響に関する各種の研究結果は決定的なものではないと判明している。
 独立系の顧問機関である英国放射線防護庁(NRPB)は1月に、携帯電話の健康への悪影響を示す確かな証拠はないが、利用者、特に児童は気を付けるべきだと提言した。
 「重要なのは、将来においても、携帯電話と基地局向けに設定された制限が、人体への放射線の影響に関して現在確認されている科学的証拠に基づくという点だ」とSTUKの研究者カリ・ジョケラ氏は声明文で述べている。
 STUKは声明文の中で、同局の調査の一部では、携帯電話のマイクロ波放射が細胞の機能に小さな変化を引き起こす可能性があることが示されているが、携帯電話の放射線が健康に及ぼす影響を結論づけるには不十分だと記している。
 STUKは2005年にUMTS規格を採用した3G携帯電話について、特に人気の高いモデルに絞ってテストを開始する予定だ。今回のテストではほかにSony EricssonとSiemensの端末が使われた。
(2005/2/21:ソフトバンクIT media−元記事2005/2/18:ロイター・ヘルシンキ)
携帯電話の電波放出量測定手法で新しい国際基準
国際団体IECの新しい国際基準により、これまで統一されていなかった携帯電話の電波放出量の測定方法が具体的に規定された。
 国際標準技術の規格策定を行う国際団体International Electrotechnical Commission(IEC)は2月16日、携帯電話が人体に与える影響について懸念が指摘されていることを受け、電磁波の放出量測定に関する新しい国際基準「IEC 62209-1」を公開した。
 人間の細胞組織は携帯電話が放出する電磁波によって刺激されるが、それが脳などに与える長期的な影響については科学者の間でまだ論議されている段階だとIECは解説。IEEEなどの標準化団体は健康へのリスクを抑える狙いで、電波の比吸収率(SAR=Specific Absorption Rate)の上限を定めている。
 ただこれまでのところ、SARを測定する手法が国際的に統一されていなかったため、結果的に電磁波の放出量はメーカーによって異なり、ユーザーは自分が買った製品がSAR基準を満たしているかどうかを確認する手段がなかったという。
 この問題に対応してIECが公開した携帯電話機メーカー向けの新しい国際基準では、SARの測定に関して世界各国で使われているさまざな手法を調整して具体的な測定方法を定めた。メーカーが国際的に認定されたSAR基準を守っていることを保証する目的で利用してもらう。
(2005/2/18:IT media)
電磁波過敏症:未解明部分多く 予防を呼びかける専門家も
 家電製品や携帯電話などから出るわずかな電磁波を感じて体の異常を訴える「電磁波過敏症」と呼ばれる人たちがいる。まだ診断が難しく、症状と電磁波の因果関係は未解明な部分が多いが、予防や対策を呼びかける専門家もいる。(Mainichi Shimbun)
■■引っ越し5回
 「電線の下を通るだけで激しい頭痛がする」というのは、千葉県富津市に住む税理士、佐野睦男さん(70)。93年から、胸が焼けるような原因不明の痛みが続いた。当時住んでいた神奈川県鎌倉市から東京都三鷹市の病院などに通ったが、電車に乗るのも苦しい。96年に知人から「電磁波のせいでは」と言われ、思い当たる節があった。自宅1階を食堂などに貸しており、2階の寝室は1階の営業用冷蔵庫や蛍光灯の真上。窓のすぐ外には高圧線があった。「床を通じてかなりの電磁波を浴びていたわけです」と佐野さん。
 こうした環境から逃れるため、5回の引っ越しを繰り返した。家の中でも電磁波測定器の針の振れが少ない所で寝る生活。昨秋、今の自宅にようやく落ち着いた。痛みからは解放されたが、用心して眠る時は家の電源ブレーカーを落とす。「電磁波を感じて」パソコンが使えないため、仕事は電卓で。電車は床下にモーターがない車両に乗り、町では頭上に高圧線がないことを確認して歩く。
 電磁波過敏症は90年ごろ米国で命名されたが、症状を訴える人はそれ以前からいたという。
■■脳血流に変化
 北里研究所病院・臨床環境医学センター(東京都港区)は03年、日本子孫基金(現・食品と暮らしの安全基金)との共同研究で電磁波による脳の血流量変化を調べた。健康な人と電磁波過敏症の症状を訴える人5人ずつに、16ヘルツ〜1メガヘルツの電磁波をタイミングを知らせず浴びせる。健康な人は1人を除いて変化はなかったが、電磁波に対して過敏性があると自覚している人は全員が電磁波を浴びた時点で血流量が減るなど変化し、最大40%減った人もいた。研究に携わった坂部貢・北里大学教授は「まだ症例が少なく、血流量変化と症状の科学的な関連性もよく分かりませんが、今後、診断方法を確立する糸口になれば」と語る。
 患者の自覚症状以外に診断基準がなく、従来「電磁波が有害という思い込み」などとして心因性の病気や自律神経失調症などと診断されることが多かった。症状も頭痛・胸痛、疲労・倦怠(けんたい)感、不眠、指などの震え、どうき・息切れ、目や歯や関節の痛み、皮膚の乾燥など個人差が大きい。科学ジャーナリストの植田武智さんは、スウェーデン電磁波過敏症協会の「電磁波過敏症の兆候」の項目を示し「電磁波から遠ざかり、休む以外にまだ治療法がない。心当たりがあれば、電気製品の使用時間を減らすなど、注意した方がいい」としている。
 00年に「電磁波過敏症ネットワーク」を設立した市民団体「ガウスネット 電磁波問題全国ネットワーク」の懸樋哲夫(かけひてつお)代表は「ガウスネットのメンバー1000人のうち電磁波過敏症の方は約100人。明確な数字はないが、過敏症の人は増えているのでは」とみる。
■■脳腫瘍の発生率
 健康への影響が議論される電磁波は、携帯電話や電子レンジなどのマイクロ波、家電製品や送電線などの超低周波だ。04年、スウェーデンの研究機関が「10年以上携帯電話を使った場合、脳腫瘍(しゅよう)の一種である聴神経鞘腫(しょうしゅ)の発生率は約2倍」などとする疫学調査結果を発表した。電磁波の発がん性に関し、国際がん研究機構(IARC)が進める国際的調査の一環で、日本でも総務省が生体電磁環境研究推進委を中心に実施している。各国の調査結果が出そろい、IARCなどからの報告を受けて、世界保健機関(WHO)が携帯電話などの「環境健康基準」を公式に発表するのは08年ごろといわれている。IARCは現状では超低周波の磁場を「グループ2B」(人間に対して発がん性の可能性がある)に分類するにとどまっている。
 総務省は「携帯電話などの電磁波については、現在の科学的知見では今の規制で適切。ただ、未解明部分もあるので研究を続けたい」とする。同省が03年にラットの脳に電磁波を当てた実験では「携帯電話の電磁波では脳内の微小血管径や血流速度に影響は認められない」という結果だった。動物や細胞の実験では、論争に決着をつけるような決定的な結果は出ていない。
 一方、電力各社で組織する電気事業連合会では「疫学調査だけでなく、動物や細胞の実験を通じて因果関係を解明する必要がある。今のところ、動物実験などで居住環境での商用周波電磁界が人の健康に悪影響を及ぼすという再現性のある結果は得られていない」としたうえで「疫学調査には、病気との関連性を認める報告と認めない報告が混在する。関連性を認める報告でも、電磁界による影響とそれ以外の要因の影響を分離できていない場合もある。国内の送電線などからの電磁波は国際的なガイドラインより十分低い値になっており、安全な範囲と考えています」と話している。
■■疑わしきは……
 「日本では疫学調査を軽視する傾向がある。動物実験なども多くは長期間にわたる電磁波の影響を明確に検証できるようなものではない。より実際的な実験方式を考え、危険の疑いがあれば、積極的に規制をかけるべきだ」と訴えるのは、財務省診療所チーフカウンセラーの精神科医、栗原雅直さん(74)だ。
 60歳で病院を退職した時、「寝る前の読書用に」と子供からインバーター付きの蛍光灯スタンドをプレゼントされた。「使い始めた直後から眠りが浅く、歯ぎしりや頻尿に悩まされた」。前立腺肥大を疑って検査を受けると「老化現象」との診断。その後、スタンドのスイッチを切ってもかすかに蛍光管が光っているのを見た栗原さんは「原因はこれかもと思い、白熱灯に変えたら症状はあらかた消えました」。以来、電磁波の健康への影響に関心を持つようになった。
 電気的、生化学的な“精密機械”である人体が電磁波の影響で「誤動作」を始める、と主張する論者もいる。栗原さんは「電磁波過敏症の患者は、炭坑内のカナリアと同様に電磁波の危険性をいち早く知らせてくれているのかも。行政や医療関係者は、彼らの声に真剣に耳を傾ける努力が必要です」と語った。
(2005/1/17:毎日新聞)
8歳以下は携帯使用ダメ! 英政府機関の理事長が警告
【ロンドン12日共同】英政府の独立機関、英国放射線防護局(NRPB)のスチュアート理事長は11日の記者会見で、携帯電話の電磁波が人体に危険を及ぼす確たる証拠はないとしながらも、子どもの使用に注意を呼び掛け、特に8歳以下には使わせるべきでないと保護者に警告した。
 NRPBがこの日発表した報告書「携帯電話と健康」に関する会見で語った。これを受け、英国内の子ども向け携帯電話業者が自主的に販売を一時見合わせるなど、社会的反響も広がっている。
 報告書は、携帯電話が人体に危険を及ぼすという「確たる証拠は目下のところない」としながらも「不確実性も残っており、はっきりするまでは予防的なアプローチが必要」とした。
(2005/1/13:共同通信)
同記事 8歳以下の携帯電話は危険 英機関
(2005/1/12:CNN)
同記事 8歳以下は使用を控えて 携帯電話の健康影響で英機関
 英政府の独立機関、英国放射線防護局(NRPB)のスチュアート理事長は11日の記者会見で、携帯電話の電磁波が人体に危険を及ぼす確たる証拠はないとしながらも、子どもの使用に注意を呼び掛け、特に8歳以下には使わせるべきでないと保護者に警告した。
 NRPBがこの日発表した報告書「携帯電話と健康」に関する会見で語った。これを受け、英国内の子ども向け携帯電話業者が自主的に販売を一時見合わせるなど、社会的反響も広がっている。
 報告書は、携帯電話が人体に危険を及ぼすという「確たる証拠は目下のところない」としながらも「不確実性も残っており、はっきりするまでは予防的なアプローチが必要」とした。
 PA通信によると、理事長は携帯電話の人体への影響を指摘したこれまでの研究を「完全に無視することはできない」と述べ、3歳から8歳までの幼児・児童が携帯を持つことは「絶対に正当化できない」と訴えた。
 同時に携帯電話が防犯に有用であることを認めた上で、14歳以下については親が判断し、使う場合もできるだけ短時間にして、携帯メールを多用するよう訴えた。
 販売が一時中止された子ども向け携帯電話は緊急時の連絡用に開発されたもので、業者は「安全だとは信じるが、子どもの健康を害する可能性がわずかでもあるなら見過ごせない」と話した。(共同)
 □総務省、国内業者は静観
 電磁波の人体への影響に関連し、英国放射線防護局の理事長が、携帯電話を8歳以下の子供に使わせるべきでないと発言したことについて、総務省や国内の携帯電話会社は「安全性には配慮している」として、当面は静観する構えだ。
 総務省によると、国内で販売される携帯電話が発する電磁波は国際ガイドラインに沿った基準で規制されている。また総務省の生態電磁環境研究推進委員会が、人体への影響について継続的に調査している。
 これまでに脳腫瘍(しゅよう)や課題学習能力(長期の記憶に関する能力)などとの関連を調査したが、基準内では影響が出る例は確認されていない。
 同省電波環境課は「各国での研究成果が世界保健機関(WHO)で検討されていくので、それを見守っていきたい。今回の英国の理事長発言で直ちに行動を起こすことにはならない」と話す。
 ボーダフォンも「さまざまな発表があることは認識しているが、現在の機種の電磁波は国内基準をかなり下回っている」と安全への取り組みを強調する。
 野島俊雄・北海道大教授(電波環境工学)は「WHOはさまざまな実験の結果、子供を特別に守らなければならないという根拠はないと結論を出している。心配だから何でもかんでもやめろというのは科学的でない」と冷静な対応を求めている。(共同)
(2005/1/12:産経新聞)
同記事 携帯電話「8歳未満は使わせないで」 英専門機関が警告
 8歳未満は携帯電話を使わないで――。電磁波が体に与える影響を調べている英国の専門機関が11日、警告を発した。頭蓋骨(ずがいこつ)の発達が未熟な子どもは、聴覚や脳の神経の病気にかかりやすいとの指摘を踏まえたもので、携帯電話と発病との因果関係を立証する確たる証拠を突き止めるには至っていないが、保護者らに予防的対応を求めている。
 警告を出したのは、英保健省の管轄下にある独立研究機関である放射線防護局(NRPB)。3〜7歳の使用は「妥当でない」とし、8〜14歳については、保護者の判断にゆだねるとしながらも、通話時間はできるだけ制限し、メールの使用をすすめている。
 スウェーデンの研究機関は04年12月、携帯電話を10年以上使っている人は、そうでない人と比べ聴神経腫瘍(しゅよう)を患う危険が高いとの報告を発表。また、ドイツでは高速通信の第3世代(3G)の携帯電話は脳の働きに影響を与えるとの研究結果も出ている。
 英国で現在使用されている携帯電話は計約5200万台で、00年と比べ倍増した。子どもの使用も急増しており、ある調査によれば、7〜8歳のうち14%が使っているのをはじめ、9〜10歳は約30%、11〜12歳は73%、13〜14歳は87%と、年齢が上がるに従って使用も広がっていることが明らかになっている。
 今回の警告に対し、英国の携帯電話の業界団体は利用者の動揺を抑えようと、「健康への悪影響に関する確たる情報はない」との声明を出した。しかしその一方で、あるメーカーは4〜8歳向けの携帯電話の開発を見合わせたとの情報も流れており、波紋は広がる気配だ。
(2005/1/14:朝日新聞)
同記事 英政府機関調査「携帯電話、健康への悪影響は確認できず」
 イギリスの、放射線防護に関する情報提供と助言を行なう機関である放射線防護局(NRPB)は11日(現地時間)、携帯電話端末と基地局が人体に与える影響についての最新調査結果を発表した。「現状では、悪影響を与えるという決定的な証拠は見当たらない」とまとめているが、同時に「引き続き注意深く利用すべき」としている。
 2000年に同機関が発表した『スチュワート報告書(日本語版記事)』のアップデート版にあたり、「決定的証拠は見当たらないが、事実関係が明らかになるまでは注意深い利用が望ましい」という前の報告書の結論を踏襲している。当初大きく取り上げられた子どもの使用の危険性に関しては、前回同様「特別に注意を払うように」と呼びかけている。
 世界的にサービス開始が本格化している第3世代(3G)携帯に関しては、同時進行で電磁波を観測することを推奨した。3Gでは、脳腫瘍の発生など、携帯電話が脳機能に悪影響を与えることを示唆する報告書が、他の研究機関から出ている。
 そのほか、一般市民が電磁波など関連情報を入手しやすくすることや、基地局構築の際に独立機関が調査を行なうこと、今後も研究を継続することなどを強調している。
(2005/1/12:WIRED)
携帯電話は人体に有害か!? 危険性の確証は困難も、十分な注意を呼びかけ
 英国放射線保護局(NRPB: National Radiological Protection Board)は、携帯電話が人体に与える影響などを調査したレポート「Mobile Phones and Health 2004」の発表を行った。健康への悪影響を確証することは現段階では難しいとしつつも、使用には十分な注意を払う必要性が強調されている。
 今回の調査が実施された背景として、NRPB会長のWilliam Stewart氏は「10年前は英国内の携帯電話ユーザーは450万人だったのに対し、現在では5,000万人を越えるユーザーを抱える状況が見られており、携帯電話は便利な通信手段として広く日常生活に浸透している。しかしながら、だれもが利用しているからといって、健康への悪影響が潜んでいるかもしれないとの懸念を払拭できるわけではない」とコメントしている。英政府は、携帯電話サービスの普及を奨励する立場を取ってきたものの、携帯電話が人体に及ぼす影響を懸念する声も寄せられてきたという。
 こうした状況を受けて、英政府は1999年に、専門家委員会となるIEGMP(Independent Expert Group on Mobile Phones)を設立して、携帯電話が健康に与える影響の調査を開始したとされ、2000年5月には報告書が出されるに至ったという。同報告書は「NRPBなどの定める安全基準値以下の電磁波にさらされることで、健康に悪影響が及ぶとの確たる証拠は見出されていない。しかしながら、現時点で全く何の害ももたらされないと結論付けることは不可能であるため、携帯電話技術の利用に際し、用心するのに越したことはない」との調査結果を明らかにしている。
 今回の発表レポートでも、基本的に同じような結果が報告されており、Stewart氏は「携帯電話がこれほど広く用いられるようになったのは、ごく最近の現象であり、長年の使用で健康に悪影響がもたらされるのであれば、まだ十分な証拠が得られる段階には至っていないだろう。こうした不確実な状況を考慮するに、引き続き慎重なアプローチを取ることが勧められる」とコメントしている。特に子どもたちに及びかねない悪影響は過小評価すべきではなく、携帯電話の発する電磁波にさらされる時間が音声通話よりも短くなるテキストメッセージを利用するなど、注意深い配慮を示すことも提案されているようだ。
 NRPBは、この分野で今後も研究を重ねていくことを強く勧めており、携帯電話の基地局(アンテナ)が人体に与える影響や、ハンズフリー通話キットの活用で実現する安全性など、さらなる実態の究明が求められている。
(2005/1/13:MYCOM PC WEB)