真面目な男性教諭が自殺ほう助
妻に「死にたい」と頼まれ幇助容疑、高校教諭逮捕 愛知
 自殺願望がある妻(34)の自殺を助けたとして、愛知県警は2004年4月25日、名古屋市名東区平和が丘、滋賀県立高校教諭の夫(44)を自殺幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕した。
 千種署の調べでは、夫は25日午前2時ごろ、「死にたいからどこかに連れていってほしい」と妻に頼まれ、自宅から同市千種区千代が丘の12階建て公団住宅へ、自転車に2人乗りして連れていった。説得してもさらに懇願されたため、11階の踊り場へ行き、手すりに腰掛けさせたところ、妻は午前2時半ごろ、手すりから飛び降りたという。妻は全身を強く打って死亡した。夫は「反省しています」と容疑を認めている。
 夫は同市名東区の自宅から滋賀県内の県立高校に通い、妻と2人暮らし。妻は病気に悩み、以前から夫に「死にたい」と漏らしていたらしい。
(2004/4/25:朝日新聞)
<自殺ほう助>持病に悩む妻の飛び降り手助け 高校教諭逮捕
 持病を抱える妻の自殺を手助けしたとして、愛知県警千種署は25日、名古屋市名東区平和が丘、滋賀県立高校の男性教諭(44)を自殺ほう助容疑で逮捕した。
 調べでは、男性教諭は同日午前2時25分ごろ、妻を自転車に乗せて同市千種区内の公団住宅(12階建て)に向かい、同住宅11階踊り場の手すりに妻を腰掛けさせるなどして妻の自殺をほう助した疑い。妻は同所から約29メートル下のアスファルトに飛び降りた。
 調べに対し、男性教諭は「約1週間前から持病を抱える妻に度々、疲れたから死なせてほしいと懇願されていた。最後まで(妻の自殺を)止められず後悔している」と容疑を認めているという。
 妻はこれまでにも度々、男性に自殺願望を打ち明けていたといい、さらに同署で詳しい動機を調べている。【岡崎大輔】
(2004/4/26:毎日新聞)
妻の自殺ほう助で 高校教諭懲戒免職
 滋賀県教委は、病気に悩む妻の自殺をほう助したとして愛知県警に逮捕、起訴された県立能登川高の男性教諭(44)を、2004年5月25日付で懲戒免職処分にした。また、同高の町田登校長(55)を職員の管理監督や指導を十分に果たさなかったとして、斎藤俊信教育長による口頭訓告処分にした。
 男性教諭は2004年4月25日、自宅近くにある名古屋市名東区平和が丘の公団住宅の11階の階段踊り場まで妻(34)を背負って運び、手すりに腰掛けさせて自殺を手助けした疑いで愛知県警千種署に逮捕された。
 男性教諭は今月14日の起訴後、「(自殺を)止めることができなかったことを悔やんでいる。公務に大きく支障をきたし、学校と生徒に対しおわびします」との文書を学校へ寄せていた。
(2004/5/26:京都新聞)
まじめな教師がなぜ?
 4月。名古屋市内にあるマンション11階から34歳の女性が飛び降り自殺を図った。この時、自殺を手伝ったとして44歳の男が逮捕された。
男は、自殺した女性の夫で、滋賀県の県立高校の教師だった。
保健体育を担当していた男は、勤務態度も真面目で生徒たちの信頼も厚かった。
知人も「奥さんに献身的に尽くしていた」と話す。
妻はなぜ自殺を図り、夫はなぜ自殺を手伝ったのか?
その背景には、現代の医療では治療さえも困難な病気との壮絶な戦いがあった。
「今晩死ぬ。苦しいから連れて行ってよ」。深夜、そう懇願された男は、妻を自転車に乗せ、近くのマンションへ向かった。「おんぶして。お願い。最後のお願いだから。この壁に座らせて」男は、最後の願いを聞き入れた。
 妻を10年もの間、苦しめたのは「化学物質過敏症」という病気だった。
これはアレルギーが先鋭化したもので、身の回りのあらゆる化学物質のにおいに反応し、強烈な痛みや、アトピーなどのアレルギー反応が起こるというもの。
化学物質過敏症は、症状に個人差が大きく、具体的な治療法は確立されておらず、また診断できる医師の数も少ないのが現状。
妻の症状は「呼吸難」「湿疹」「体中の激痛」などをともなう重症だったという。
 妻の自殺を手伝った男は、何度も引越しを繰り返していた。しかし、どこに移り住んでも、あらゆる化学物質のにおいに反応し、長くは暮らせなかった。
妻の実家がある名古屋に移り住んだ男は、勤務先の滋賀県の学校まで片道3時間かけて通勤していた。献身的な介護、長時間の通勤、それでも改善されない妻の病状。男は自身も「うつ病」と診断された。
 自殺の6日前。「これから死にに行く」といって家を飛び出した妻を男は何とか説得して家に連れ戻した。妻の異変に、男はこの日から学校を休んでいた。
その日から妻の自殺をせがまれ続けた男は、ついに自殺を止めることができなかったという。
この取材を担当したディレクターに男からの手紙には、こう書かれていた。
「生きていても苦しい。死んで楽になりたいと言っていました。でも誤解しないでください。私は妻が元気になって、また二人で楽しく暮らす日を夢見ていたのですから」
  化学物質過敏症支援センター
  連絡先:045-663-8545月・水・金(祝日を除く)朝10時から夕方5時まで受付
(2004/7/18:テレビ朝日系「報道STATION」-特集-)