神奈川・保土ヶ谷高校シックハウス問題
校舎屋上の防水工事が原因
★報道より
生徒ら100人がシックスクール症状、保土ケ谷高
 横浜市保土ケ谷区川島町の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、660人)で2日、教職員と生徒約100人が、建材などに含まれる化学物質の影響で頭痛や吐き気などを引き起こす「シックハウス症候群」と見られる症状を訴えていることが分かった。ふらつきや目に痛みを生じた教師2人が近くの病院で治療を受けた。
 登校直後から体調不良を訴える生徒が相次いだため、授業は行わず、全生徒を帰宅させた。同校によると、昨年9月に雨漏り補修工事をした際に使われた有機溶剤が原因とみられる。3月にも10人近い教職員や生徒に被害があった。
 刺激臭のある部分は防火シャッターを閉めるなどして対応していたが、ここ数日の気温の上昇に伴い、被害が広がったとみられている。
(2005/5/3:朝日新聞)
同記事 高校でシックハウス症状 生徒ら数十人、頭痛など
 横浜市保土ケ谷区の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、生徒660人)で、生徒や教職員数十人が4月下旬から、頭痛や吐き気などシックハウス症候群とみられる症状を訴えていることが3日、分かった。
 同校によると、昨年9月の校舎の雨漏り防止工事で使われた有機溶剤が原因とみられる。
 昨年末から、工事場所の近くを通った生徒らが頭痛などを訴えるようになり、今年3月にも約10人が症状を訴えたという。同校は「気温が上がり、症状を訴える人が増えたのではないか」としている。
 廊下の一部を板で仕切るなどしても改善されなかったため、同校は6日を臨時休校にすることを決め、対策を検討している。
(2005/5/3:河北新報社)
同記事 校舎の防水工事が原因でシックハウス症候群に
 横浜市の神奈川県立保土ケ谷高校で、昨年秋から教職員や生徒が頭痛や吐き気などシックハウス症候群と見られる症状を訴えていることが明らかになった。教師2人が病院で治療を受けた。学校が実施したアンケートによると300人を超える生徒が体調不良を訴えた。ただし、これらが化学物質が原因であるかどうかは特定できていないという。同校は5月6日から休校にするなどして、教室内での授業を避けた。5月16日から、臭気の出た場所から離れた教室を使うなどして、通常通りの授業を再開した。
 神奈川県財務課によれば、雨漏り防止のために行った屋上のウレタン塗膜防水工事が原因だという。化学物質がコンクリートのクラックなどに浸透して下の教室に流れ込んだ。
(2005/5/22:日経BP)
保土ケ谷高校シックハウス問題
  横浜市保土ケ谷区川島町の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、660人)で教職員や生徒が「シックハウス症候群」とみられる症状を訴えている問題で、学校が実施したアンケートで、体調不良を訴えている生徒が308人に上ることがわかった。同校では4月28日以降、教室内での授業がほとんど実施されていないが、12、13両日も休校とすることを決めた。
  アンケートは、4月下旬から体調不良を訴える生徒が相次いだため、2日に実施された。それによると、「頭痛」を感じた生徒が140人、「気持ちが悪い・吐き気」を感じた生徒が84人、「のどの痛み」が61人、「皮膚がかゆい」が49人などの結果だったという。
  昨年9月に雨漏り修理をした際に使われた有機溶剤が原因とみられているが、該当の校舎内から基準を超える有機化合物「キシレン」の数値が検出されていたことも明らかになった。県教委が4月28日に空気中の化学物質濃度を調査したところ、同校舎3階の音楽室から、文部科学省の基準値(1立方メートルあたり870マイクログラム)を上回る千マイクログラムが検出された。
  同校ではこの事態を受け、2日に全校集会を開き、それ以降も休校や遠足などで校舎内での授業はほとんど行われていない。
  同教委は調査の範囲をさらに広げている。同校は「検査結果などをみて、今後の対応を決めたい」として、臨時休校を13日まで延ばすことにしたという。
  同校では7日に約300人の保護者が出席した説明会が約6時間にわたって開かれ、対応が遅れたことについて県教委の担当者が謝罪した。
  県立保土ケ谷高校で「シックハウス症候群」とみられる被害が拡大している問題で、県教委は対応の遅れなどを保護者らに謝罪したものの、原因については「換気せずに閉め切った教室だから(基準を超える)高い数値が出た。きちんと換気すれば問題はない」との立場だ。だが、シックハウスが社会問題化して以降、東京都教委が化学物質濃度を国の基準値の半分以下に目標を定めるなど「対策先進自治体」も目立つのに比べ、県教委の対応の甘さを指摘する専門家も出始めている。
  シックハウス対策として、東京都教委がこうした目標値を設定したのは03年。埼玉県教委も同じ03年に、教室の床をワックスする際は夏休み期間に限る▽改修工事などではトルエンやホルムアルデヒドを含む塗料や接着剤は原則として使用禁止など具体策を盛り込んだ対策マニュアルを作っている。
  これに対し、県教委にはこうしたマニュアルはなく、保土ケ谷高校の問題発覚後の今年1月に、学校関係の工事を発注する際の施工指示書に「使用する材料はVOC(揮発性有機化合物)などに十分配慮する」という一文を加えた。
  また、県教委は4月27日に対策検討委員会の初会合を開いたが、委員10人全員が県職員。都立高校で同様の問題が起きた際には、こうした対策委員会には外部の建築士や化学物質の専門家も加わった。
  県教委は「多感な時期の生徒たちなので、心理的な影響もあるのではないか」とも説明するが、化学物質過敏症支援センター事務局長の網代太郎さんは「専門医でも診断が難しいシックハウスや過敏症を、どこまで理解しているのか」と県教委の姿勢に疑問を投げかける。
  シックハウス問題に詳しい横浜市中区の1級建築士の尾竹一男さんも「基準値を超える数値が出た以上、一刻も早く専門医による診断を受けさせるべきではないか」と話している。
■キーワード
  シックハウス 建材や内装などに含まれるホルムアルデヒド、キシレンやトルエンなどの有機化合物が空気中に出て、頭痛や吐き気、目の痛みなどの健康障害を引き起こす。症状は個人差が大きい。化学物質に長くさらされるなどすると、微量の化学物質にも反応する化学物質過敏症になり、日常生活に支障をきたすケースもある。
(2005/5/12:朝日新聞・神奈川)
保土ケ谷高シックハウス 校舎全面補修へ
  横浜市保土ケ谷区川島町の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、660人)で生徒308人がシックハウス症候群とみられる症状を訴えていた問題で、県教委は14日、保護者らに対し、(1)原因となった校舎を全面補修する(2)全生徒を対象に臨時健康診断を行う、などの対応策を提示。保護者側も基本的に了承した。同校では6日から校内での授業が開けない事実上の休校状態が続いていたが、16日から再開する。
  2回目の保護者会となったこの日の会合には、約150人が出席した。
  県教委の阿久沢栄・学校教育担当部長が対応策として、シックハウスの原因とみられる2棟の校舎の雨漏り補修をやり直し、化学物質を吸収しているとみられるセメント部分や内装材をすべて撤去する工事内容を説明。総工費は3千万円といい、7月上旬に着工して約2カ月で終える予定という。
  さらに、今月26日と、工事後の9月に全生徒を対象とした臨時健康診断を実施するほか、化学物質濃度についての定期的な検査も行う方針を示した。生徒が通常使用する一般教室について化学物質の検査をした結果、いずれも文部科学省が定める基準値を下回ったことも明らかにした。
  そのうえで阿久沢部長は「異論がなければ授業を16日から再開したい」とはかった。
  保護者らからは「代替校舎を探すべきではないか」との質問が出たが、阿久沢部長は「空いている施設がない。全生徒が移動するのは難しい」と回答。また、「原因の究明はどうするのか」との質問には「まずは子どもたちの安全確保を最優先し、危険な物質を排出したい」と述べた。
  また、県職員だけでつくる対策検討委員会の構成についても保護者らから批判的な意見が出され、メンバーに専門家のほか、保護者代表も加えるよう検討する考えを県側は明らかにした。
  保護者からの質問は約2時間に及び、県教委は、授業再開について強い異論は出なかったとして、授業を再開する方針だ。
  説明会に先立ち、県教委は国立相模原病院の専門医による相談会も開き、生徒の健康相談に応じた。保護者に対し、同校は「不安なことがあれば医師やカウンセラーに相談して欲しい」と呼びかけた。
  ただ、県教委の説明に納得できない保護者もおり、説明会後に20人ほどの保護者らが「授業を再開して本当に大丈夫なのか」などと県教委側に詰め寄った。1年男子生徒の父親(47)は「シックハウス症候群はいったん過敏症になると、基準値以下の環境下でも吐き気などの症状を起こすという。まだ納得はできない」と話していた。
(2005/5/15:朝日新聞・神奈川)
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 ◇シックハウス症候群の疑い−−知事、被害状況視察
 県立保土ケ谷高校(横浜市保土ケ谷区、寺崎和男校長、660人)で、校舎屋上の防水工事が原因でシックハウス症候群とみられる体調不良を訴える生徒が相次ぎ、松沢成文知事は20日、同校を訪れ、被害状況を視察した。生徒からは「工事直後から異臭がし、体調が悪くなった人もいた。早く改修してほしい」と切実な訴えがあった。
 ◇県教委、7月に改修工事
 県教委などによると、屋上の防水工事は昨年9〜10月に2棟で実施。工事終了後、うち1棟の直下の音楽室や書道室で異臭が発生、頭痛や目の痛みを訴える生徒や教師が出た。12月に両教室の使用を中止したが、今年4月下旬に、別棟でも異臭が発生、体調不良を訴える生徒が相次いだ。
 学校のアンケート調査で、4月下旬から5月初めにかけて、308人の生徒が何らかの体調不良を訴えたため、3日間の休校措置がとられた。また、教師2人がシックハウス症候群の疑いがあるとの診断を受けた。
 原因は防水工事に使われた有機溶剤が、コンクリートを通して下の教室の天井や壁に染みこんだと考えられる。4月28日の空気中の化学物質濃度調査では、音楽室内の個別練習室で、キシレンが文部科学省の基準値(1立方メートルあたり870マイクログラム)を上回る1000マイクログラムが検出された。県教委は7月上旬から約3000万円で天井や壁の撤去などの改修工事を行う。
 知事と生徒の懇談では、生徒から「音楽室で合唱中に気分が悪くなり、歌えなくなった部員もいた」「有機溶剤を扱う店に行くと、肌が荒れるようになった人がいる」との声が上がった。
 松沢知事は「対応が遅れ、混乱を招き申し訳ない。再発防止のため、原因究明に取り組み、学校だけでなく、県関連施設全般について、修復工事の材料や工法についてマニュアルを作りたい」と述べた。
(2005/5/21:毎日新聞・神奈川)
『対応の遅れは反省』保土ケ谷高のシックハウス
 横浜市保土ケ谷区の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、生徒数六百六十人)で、屋上防水工事後に教職員と生徒らが、頭痛や吐き気などシックハウス症候群とみられる症状を訴えていた問題で、松沢成文知事は二十日、同校を視察、生徒代表との意見交換で「対応の遅れは反省したい」と語った。
 知事はまず、防水工事が行われた直下の教室を訪れ、校長や県教委の説明を受けた後、授業開始前に生徒会役員と合唱部員の計十人の生徒と面談。生徒からは「においが出た時になぜすぐ対応ができなかったのか」「改修工事を早くやってほしい」と疑問や要望が出た。
 知事は「もっと調べれば良かったが、屋外工事が教室内に影響を与えるとは予想できなかった。対応が後手に回ってご迷惑をかけた。二度と起こさないよう取り組みたい」と述べ、全面改修工事の予定や再発防止のマニュアルを作成中であることを説明した。
 同校によると、女性教員二人が、医師からシックハウス症候群の可能性があるとの所見を得ている。また因果関係は不明だが五月上旬のアンケートで生徒三百八人が何らかの症状を訴えており、今月二十六日に全生徒を対象に健康診断を行う。
(2005/5/21:中日新聞・神奈川)
ひび通じ溶剤流出 保土ケ谷校シックハウス
  横浜市保土ケ谷区川島町の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、660人)で5月に表面化したシックハウス問題は、雨漏り補修工事に使われた有機溶剤が校舎のコンクリートのひび割れを通じて屋内に漏れたことが原因とみられることが分かった。県の20日の対策検討委員会で報告された。
  高濃度の有機溶剤が検出された音楽室などの屋上部分のコンクリートを抜き取って調べた結果、多数のひび割れがあったという。
  雨漏り補修工事が実施されたのは昨年9月で、直後から教員や生徒が頭痛や吐き気を訴えた。5月に学校が実施した調査では308人の生徒が頭痛や吐き気などの症状があったと答えた。シックハウス症候群とみられる被害が広がった原因について、委員会に出席した田辺新一・早稲田大理工学部教授が「補修工事後にコンクリートのひび割れを通じて、かなりの量の有機溶剤が屋内に漏れ出したためと考えられる」と指摘した。
  また、委員会では不調を訴えて専門医を受診した生徒1人が、シックハウス症候群と正式に診断されたことも報告された。
(2005/6/21:朝日新聞・神奈川)