塗料・トルエン・キシレン
●塗料とは?トルエン・キシレンはどこに?
 塗料は、いろいろな原料を組み合わせて出来ています。それを大きく分けると「塗膜にならない成分」と「塗膜になる成分」に分けられます。前者は揮発し、後者は固形化するのです。「塗膜になる成分」は主要素(樹脂)・副要素(添加物)・顔料に大別されます。顔料が入っていない物がワニス、クリアーなどの透明塗料で、顔料が入っている物がエナメル等有色不透明塗料になります。
 塗料の中で室内の空気を汚染する物は、主に「塗膜にならない成分」ということになります。「塗膜にならない成分」はいわゆる溶剤のことです。溶剤は、樹脂を溶かし、塗料に流動性を与え、塗りやすくするために欠かせないが、塗膜には残らず、空気中に揮発、蒸発にします。そのことにより空気を汚染するのです。溶剤が水である水性塗料と、溶剤にトルエン、キシレンなどを用いた油性塗料が塗料には主としてありますが、油性塗料に主に使われるトルエン、キシレン類が人体に大きく影響を及ぼすわけです。
●トルエン・キシレン類をさけるには。
 では、この塗料から出るトルエン、キシレン類をさけるにはどうすればよいかというといくつかの方法があります。一つはトルエン、キシレン類が使われていない塗料を用いるということです。溶剤が水性のもの(一概に安全とはいえない・注1)を使うとか、溶剤を使わない塗料を使うとかです。最近亜麻仁油を用いた自然系塗料なども増えてきています(注2)。亜麻仁油は、最初に書いた「塗膜になる成分」の樹脂(油類・天然成分)になりますが、溶剤としての役割も果たします。しかし自然系塗料は、欠点として価格が高価、施工性が悪いなどの点があげられます。もう一つの方法は、トルエン類が用いられた塗料を塗った後に長期の乾燥期間をおくということです。研究者の研究によりますと、一般的な油性塗料が乾燥して溶剤の揮発量が大幅に減るのに約3週間かかるようです。それ以上の期間は入居するのはさけ、溶剤が揮発するのを待つということです。しかしながら、しばらくの間少量でも揮発し続けるわけですから必ずしも安全だとは言い切れないところがあります。
 塗料を塗るということは、塗る物の保全などいろいろな理由が考えられますが、塗るのならばいろいろな影響を考えて塗料を選択しなければいけないということを忘れてはいけません(注3)。
注1:水性塗料においても大多数の製品にはVOC(揮発性有機化合物)類が添加されています。油性塗料に比べ、トルエン、キシレン等VOCによる汚染の影響は少ないですが、全ての水性塗料が全ての人に安全であると言い切れるわけではありません。通常健康な一般の方は、たいした影響があるとは思えませんが、化学物質に過敏となっている方にとって水性塗料は、一概に全て大丈夫なものであるとは考えないで下さい。
注2:亜麻仁油を用いた天然系塗料に関してですがVOC類の問題は多くの製品に無いものの、硬化するまでの間は少量のホルムアルデヒドを放出致します。(工業的添加でなく、自然的硬化により発生するものと考えられる。)塗布してから硬化するまでの間だけの問題とほぼいえますが、化学物質に非常に敏感な方は使用される前に予め認識されていた方が良いといえます。体に優しい製品であっても施工課程における影響も考えておくことをお勧め致します。
注3:JIS、JAS、建築基準法が平成15年に改正され塗料にもF☆☆☆☆等の表示がされるようになりましたが、現在の規制対象はホルムアルデヒドとクロルピリホスだけとなっております。また、規制対象外の製品も多くあります。F表示は一つの安全の目安と考え、F☆☆☆☆だから全て安全であるとか、表示がないから全て危険であるとかは一概に考えられない方が良いといえます。
●下記は、厚生労働省のガイドラインにあげられた、トルエン、キシレンに関する説明です。
 トルエン
<一般的性質>
 トルエンは無色で芳香をもつ、常温では可燃性の液体。揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留すると考えられる。しかし通常は対流によって拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。
<主な家庭内における用途と推定される発生源>
 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。アンチノッキング剤として、ガソリン中に添加されることがある。
 室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。
<健康影響>
 労働環境における許容濃度として100ppmが勧告されている。480ppbあたりに臭いの検知閾値があるとされる。高濃度の短期暴露で目や気道に刺激があり、精神錯乱、疲労、吐き気等、中枢神経系に影響を与えることがある。また意識低下や不整脈を起こすことがある。
 また、比較的高濃度の長期暴露により、頭痛、疲労、脱力感等の神経症状へ影響を与えることがあり、心臓に影響を与え不整脈を起こすことがある。発がん性の指摘はない。
<現在の指針値>
 現在の指針値は、260μg/m3(0.07ppm)で、安全性の観点から影響が認められた濃度のうち最も低くなる、ヒトの神経行動機能及び自然流産率に影響が認められた濃度を採用し、これに安全率を加味して設定している。
 キシレン
<一般的性質>
 キシレンは無色で芳香を持つ。常温では可燃性の液体。揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留すると考えられる。しかし通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。
<主な家庭内における用途と推定される発生源>
 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。キシレンの市販品は通常エチルベンゼンも含んでいる。トルエンと同様、ガソリンのアンチノッキング剤として添加されることがある。
 室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。
<健康影響>
 トルエンと同様、労働環境における許容濃度として100ppmが勧告されている。また高濃度の短期暴露の影響はトルエンと類似している。蒸気はのどや目を刺激し、頭痛、疲労、精神錯乱を起こすことがあるという。200ppm程度の濃度で明らかに目、鼻、喉が刺激され、労働者の中に作業反応時間の延長するものが出るといわれている。
 また、比較的高濃度の長期暴露により頭痛、不眠症、興奮等の神経症状へ影響を与えることがあるといわれている。発がん性の指摘はない。
<現在の指針値>
 現在の指針値は、870μg/m3(0.20ppm)。