編集後記より

建築相談分科会委員
ハンドブック改訂WG 橋本 頼幸

 公益社団法人 大阪府建築士会では、これまでに“住まいのハンドブック マイホーム・建て方、買い方(2000年11月発行)”、“建築相談ハンドブック 建てたあとで泣きを見ないために(2006年10月)”、“建築相談ハンドブック 建てたあとで泣きを見ないためにII(2012年6月)”と3冊のハンドブックを発行してきました。

 当初はトラブルが発生してしまってからの対応では限界があることから、消費者に対する啓発ツールとして活用してもらいたいとの思いからスタートし、改訂を重ねてきました。直近の「建築相談ハンドブックII」では、「建築士の間取り実例全20例」と題して、大阪府建築士会の会員から新築住宅やリフォームの間取りを提供いただきました。これは、これまでの啓発ツールからさらに一歩踏み出して、「住宅を持ちたい・買いたい」と思った消費者とそのお手伝いをしたいと思う建築士のコミュニケーションツールとして活用してもらうことを目指しました。建築士として住宅設計の最前線にいる設計者たちが考えた間取りや写真を見ながら話をすることでき、手にとった消費者が求めているイメージを具体化でき、それを設計者やハウスメーカー、工務店などに伝えるツールとして一役買ったのではないかと思っています。

  しかし、時代の流れは早く、「建築相談ハンドブックII」の発刊から3年を経て、Q&Aの内容が時代に合わなくなってきました。間取り20例も白黒図面と写真で、読み物としても少し時代遅れの感が否めなくなってきました。

 そんな中、今回間取り20例を見直し、Q&Aも更に踏み込んでより消費者目線で再構成し、フルカラーで再構成をする機会を得ました。そして、今まで建築士会の有志で取り組んできた構成やデザインをデザインの専門家に協力していただくことで、より読み物として高いレベルを目指して改訂するに至りました。

  住宅を手に入れるときに考えないといけないことや決めないといけないことは、時代とともにより複雑化・専門化しています。情報もあふれかえっています。そのなかで、消費者として、あるいは住宅取得者として最低限知っておいていただきたいこと、考えておいていただきたいことを、厳選してQ&Aを構成し、わからないこと時代とともに変わっていくことはその最前線にいる専門家に任せて「一緒に考えていく」というスタンスを理解していただくように工夫しました。

  本書が幅広く利用され、消費者と建築士をつなぐコミュニケーションツールとして新たなページを開くことを願う次第です。またその期待に十分応えられるハンドブックになったと信じています。

 最後になりましたが、間取り資料のご提供を頂きました建築士会の最前線で活躍する設計者の皆様、執筆・編集にご協力いただきました建築相談ハンドブック改訂WGの皆様、そして細かな注文に一つ一つ丁寧にご対応いただきましたモリヤマカオルデザイン室の盛山かおる様、フジワキデザインの藤脇慎吾様・黒崎厚志様、大阪府建築士会事務局はじめご協力いただきました多くの皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。