トルエン
(2)トルエン

<一般的性質>
 トルエンはは無色でベンゼン様の芳香をもつ、常温では可燃性の液体。分子量は92.13で、常温での蒸気圧*は約2.9kPa、蒸気密度は約3.1である。従って揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、通常は対流によって拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる**。
* 一般的に化学物質の揮散のしやすさは、沸点と蒸気圧を指標に判断されるが、建材等からの物質の揮散は蒸発によるものであるので、この値を指標とする方が適していると考えられる。一般的には値が大きいほど揮散しやすいと見なされる。
** 空気の動きの少ない場所では、一般に蒸気密度の大きい重い気体の濃厚な蒸気はいったん低部に滞留する。時間がたつとこの蒸気は拡散により上昇し、空気と混合する。いったん数百ppm程度まで希釈された蒸気の比重は空気とほとんど違わない。こうした状態の蒸気は二度と床に沈むことはない。

<主な家庭内における用途と推定される発生源>
 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。アンチノッキング剤として、ガソリン中に添加されることがある。
 室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。

<健康影響>
 労働環境における許容濃度*として100ppmが勧告されている。480ppbあたりに臭いの検知閾値があるとされる。高濃度の短期暴露で目や気道に刺激があり、精神錯乱、疲労、吐き気等、中枢神経系に影響を与えることがある。また意識低下や不整脈を起こすことがある。生物学的半減期は約6時間前後と推定されている。
 また、比較的高濃度の長期暴露により、頭痛、疲労、脱力感等の神経症状へ影響を与えることがあり、心臓に影響を与え不整脈を起こすことがある。発がん性の指摘はない。
*一般的に、労働者が当該物質に暴露された場合に、空気中の濃度がこれ以下であれば健康影響が見られないとされる濃度で、通常1日8時間、週40時間程度の労働時間中に、肉体的に激しくない労働に従事する場合を想定して定められている。但し、感受性は個々人によって異なるので、この値以下でも、不快、既存の健康影響の悪化、あるいは職業病の発生を防止できない場合があると勧告されている。

<現在の指針値>
 現在の指針値は、260μg/m3(0.07ppm)で、安全性の観点から影響が認められた濃度のうち最も低くなる、ヒトの神経行動機能及び自然流産率に影響が認められた濃度を採用し、これに安全率を加味して設定している。

厚生労働省「室内空気中化学物質についての相談マニュアル作成の手引き」