審査結果 震災に備えるアイデア募集 防災フォーラム

「震災に備えるアイデア募集」審査講評 

関西大学教授 河田惠昭氏

応募していただいた作品は、どれも個性豊かな内容で、優劣をつけることがとても困難でした。したがって、中学校以下の部では、取り上げていただいたテーマが、私たち身の回りで起こりやすいのかどうかということに注目しました。つまり、家庭を中心とした日常防災や生活防災という視点がとても重要だからです。
優秀賞の作品は、いずれもアイデアが素晴らしく、作者の工夫が溢れているという印象でした。一般の部では、いずれの作品も完成度が高く、表現方法もプロフェショナルにふさわしいものばかりでした。その中でも、実現性が高い作品や東日本大震災を教訓とした題材を取り上げた作品には、防災・減災に応用できる独創的な内容が含まれており、完成度の高い作品が目立ちました。

プロダクトデザイナー 喜多俊之氏

震災に対する心構えは、日頃の教育やその環境づくりに欠かせない大きなテーマです。
この度の「震災に備えるアイディア募集」に寄せられた、世代を超えて応募された作品は多くの示唆を与えてくれました。過去の歴史の研究、新しいテクノロジーによる研究開発課題の提案でもありました。
多くのアイディアの中に日常生活の中での家族や近隣の人たちとの繋がりを考えたものや、奇抜であるけれど今後の防災技術に関わるヒントなどが多く寄せられたのも大きな成果です。
震災に備えて私たちの知恵と技術の開発がなくてはならないことなのです。

建築家 坂 茂氏

はっきり言って「一般の部」よりも「中学生の部」の作品の方が実践的であったり、ハッとさせられるユニークな案があり、レベルが高いことに驚かされました。
例えば、役所の担当者が見て見ぬふりをしている寒くてプライバシーがない状況の避難所の改善や、家族の予定を知っておくだけで災害時以前から家族の絆が深まる「ファミリーカレンダー」。
また、高層マンションからの避難の改善や、よく知っているはずの自宅の分析などとても実践的で必要な改善案です。
でも一番ハッしたのは、コンクリートの堤防に代わる「海辺のエアバッグ」です。今回の東北大震災の予想を超える津波被害のため、各地でとても高いコンクリートの防波堤が計画されています。しかしそれにより、一度失った景色は取り戻すことが出来ません。
大阪の世界最大のテント会社「太陽工業」さん、これ開発してください。

JT生命誌研究館館長 中村桂子氏

2011年3月11日以来、研究テーマである自然・生命・人間・科学・科学技術について考え、新しい生き方を探してきました。応募作品に同じ気持を感じ、共感しながら審査にあたりました。
一般の部では、防災と同時に自然を生かした街づくりの提案が目立ちました。固い防波堤でない津波対策、仮設住宅や避難タワーを日常に組み込む工夫など実現を望みます。
子どもたちは大人より科学技術への期待が高く、夢を感じました。一方、仮設住宅での孤独死対策、避難階段の改善、水の確保などよく考えていて感心しました。
個人的には「工業高校ものづくり力」という若者の提案を心強く思い、家族カレンダー、家の避難経路など身近な工夫もよいと思いました。
審査を終え、皆で新しい社会が作れそうだという気持になっています。

大阪府危機管理室長 吉村庄平氏

大阪府では、今後発生が予想される東海・東南海・南海地震と、それに伴う津波災害への対策に取り組んでいます。
今回、たくさんの提案が寄せられましたが、色々な切り口があり、災害に対する意識の高さにびっくりしました。その中には、私たちが取り組むべき課題として大切だと考えている提案もたくさんありました。
中学生以下の部の「我が家の避難経路を考える」では、日頃から災害等の有事を具体的にイメージし備えることの大切さがわかります。イメージできない事に対しては、とっさの行動ができないからです。また「ファミリーカレンダー」は、家族の絆を深めることが、災害時には役立つことを訴えるものでした。
まずは府民の皆さんが、身近なところから防災に対する意識を持っていただき、災害を家族で考え、備えていただくようお願いします。

大阪市危機管理室長  打明茂樹氏

今回 震災に備えるアイデア募集に際して、その審査に当たらせていただいたことは、まことに光栄に思います。
応募された方々は、たとえば、昨年の東日本大震災で話題となった、人と人との繋がり「絆」を大切に思われているなどをテーマにするなど、あらためて気付かされた教訓をもとに様々な斬新な発想をされておられ、大いに共感したところです。
特に印象に残ったのは、震災関連死をふせぐために、仮設住宅でのコミュニティーをはぐくむための方策や家族の安否確認の具体の対策などソフト面の提案が多く寄せられました。
自助、共助の実践が震災対策の大きな柱であり、具体的な課題などよく研究されて多くのご意見をいただいていることに、敬意を表する次第です。

(社)日本建築家協会 近畿支部長 小島 孜氏

主催者側として審査に加わりましたが、予想以上の応募数で、1次審査を担当した関係者はうれしい悲鳴をあげていました。応募者の年齢も6才から77才までと幅広く、提案内容も多岐にわたる質の高いものでありました。
建築の専門家や大学生の応募も多く、それはプレゼンテーション技術から一目瞭然でしたが、
<広くアイディアを募り防災意識を高める>というこのコンクールの主旨から、表現力よりもアイディアの内容に重きを置き、年齢や経歴も加味して審査をいたしました。その結果、素人の思いつきが専門性の高い提案よりも評価された傾向があります。
3月1日の展示では、子どもや一般の方々には専門家の提案のすごさを、専門家の皆様には自由なアイディアの面白さを楽しんでいただければ幸いです。