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主催 : 公益社団法人大阪府建築士会 / 後援 : 大阪府
「大阪建築コンクール」の趣旨
建築士はその職責を通じて地域社会の発展に寄与し、建築美を通じて建築文化の向上、ひいては地域文化の振興にも寄与していく必要があり、その責務は重大である。
大阪建築コンクールは、建築士と社会とのかかわりを通じて建築作品を評価し、その優れた実績をたたえ、建築作品の設計者である大阪府建築士会正会員または大阪府在住もしくは在勤の設計者を表彰する。同時に行う渡辺節賞については、新しい建築文化の原動力となる若い優れた設計者をたたえ、さらなる発展を望むものである。
募集範囲
2019年1月1日から2024年12月31日の間に竣工し、完了検査済証の交付を受けた建築物
*建築確認申請不要物件は完了検査済証不要
*竣工年月日は工事完了時
審査委員会
委員長 | 倉方俊輔(大阪公立大学教授) | ||||
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委 員 ※50音順 |
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受賞作品紹介
賞 | 受賞 | 設計者 | |
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大阪府知事賞部門 | 大阪府知事賞 | 御堂筋ダイビル | 喜多主税 金子公亮 谷口尚史(株式会社日建設計) |
大阪避雷針工業神戸営業所 | 山崎篤史 大石幸奈(株式会社竹中工務店) | ||
渡辺節賞部門 | 渡辺節賞 | ATEREA GARDEN 光亜興産本社 | 真庭 綾(株式会社日建設計) |
光土間の隠れ家 | 北村泰之(一級建築士事務所KNOOOT株式会社) |
審査経過並びに総評
審査委員長 : 倉方俊輔
伝統ある賞の審査委員長を務めることになり、結果として「大阪建築コンクール」らしい審査結果となったことを、今、清々しく感じている。
本賞の要点は、募集要項に明記されている通り、「建物の種類・規模は問わない」という点にあると考える。建築は建築である。その中で、多くの人々が自作を応募というかたちで世に問い、公益社団法人大阪府建築士会の関係者が準備に力を注ぎ、審査員が作品を吟味し議論を重ね、これが建築であると考えるものを発表する。この営みが積み重ねられbて、すでに67年となる。過去の入賞者を見ても錚々たる顔ぶれが並び、大阪の建築史を物語っている。作品の性格には、その時々の時代性が如実に反映されている。
本賞は「大阪府知事賞」と「渡辺節賞」の二部門に分かれているが、両者の間に大きな違いがない点も特徴といえる。後者には応募資格として「39歳以下」という条件があり、若手顕彰の意義が込められているが、過去には大阪府知事賞が住宅作品に与えられたこともあれば、渡辺節賞が大型の建築に贈られたこともある。優れた建築において、規模の大小は本質的な問題ではない。さらに言えば、設計組織の規模も無関係だ。大阪にはそんな風に、建築をひとつのものとして捉える風土がある。建物の種類や規模にかかわらず、作品の質をめぐって真摯にコミュニケーションがなされ、新しい試みに光が当たる。そうした伝統が、今年68回目となる審査結果にも表れている。
本年度は、大阪府知事賞部門に35点、渡辺節賞部門に9点の応募があった。応募書類をもとに第一次審査を行い、9点を第二次審査(現地審査)の対象とした。この選考作業が、実に悩ましい。これまで日本建築学会賞や東京建築士会の賞の審査にも携わってきたが、書類だけでは伝わらなかった質に、現地で出会うことは少なくない。
したがって、できるだけ多くの作品を現地で見たいという思いはあるものの、数をいくら増やしたとしても審査員が読み取れなかった可能性は残る。そのため、過去の経験を踏まえ、2日間で余裕をもって見学・議論できる件数に絞る判断をした。こうした事情をふまえ、本年度の応募者には、今後も自作を世に問う姿勢を継続してほしいと願っている。
大阪府知事賞を受賞した「御堂筋ダイビル」については、オフィスビルという建物の種類を捉え直した設計理念の深さが、審査員一同の高い評価を得た。単に良く機能する建物を街に一つ加えるのでもなく、造形的な遊びに偏るのでもない。ファサードは、日射抑制という機能的要請から導かれた外装フィンを持ちつつ、遠景における都市の風景とも調和している。2階のテラスは1階店舗の賃貸面積を最大化するという経済性への配慮のもとで設計されながら、建築の内と外にいる市民の体験の両方を豊かにしている。技術面・コスト面で無理をしていないのもいい。個別性を楽しみ、普遍性のある解答が提出されている。
もう一つの大阪府知事賞である「大阪避雷針工業神戸営業所」も、リノベーションないしは改修設計という昨今、一般的になってきた建物の種類をより高みへと導くものとして評価が集まった。単にコストや環境配慮といった理由で既存建物を活用したのではなく、その既存性を素材としながら、建築がいかに豊かで創造的なものになり得るかを示している。減築によって設けられたトップライトから構造体に落ちる光は空間に生命を吹き込んでおり、新たな基礎を必要としない左右への開放的な構成が、柔らかく包容力のある空間性を実現している。こうしたデザインの質は、施主に対しても業務への自信と誇りを与えている。改修設計こそが、新築以上に個別性や新規性を発揮できる設計領域なのではないか。そんな理念が感じられる。
渡辺節賞を受賞した「ATEREA GARDEN 光亜興産本社」は、完成度の高さに加え、現地審査での納得感が際立っていた。これは個人的な見解となるが、立地を愛していると感じられた。施主が長年関わっていたこの街の中での位置を読み解き、敷地の形状を内部空間の心地よさにつなげ、施主が望む次のまちづくりを自然に推進する基盤を形作っている。建築とは揺れ動かない、思想の表明である。本作がまちなかにできたことで、関わる人々の関係性はさらに良くなっていくことだろう。今後も多くの声を聴き続けながら、建築をつくり続けてほしい。
もう一つの渡辺節賞である「光土間の隠れ家」こそ、建物の規模と建築の理念の大きさとは別問題である事実を、最も示しているものかもしれない。また、今回たまたま他の3作品はいわゆる組織設計事務所に所属する設計者の作品であり、本作はそうではないが、それらを同列に審査できることも実感できた。つくり手であり、暮らし手でもあるセンスの良さを感じさせる心地よい空間であり、それが同時に、再建築不可の建物に対する説得力ある解答となっている。大阪らしさという個別性を救済できる建築家らしい能力をぜひ、普遍的に展開してほしい。
「大阪建築コンクール」の「大阪」とは、大阪らしさや京都らしさ、そして奈良、神戸、滋賀などにおける多様性が交流し、刺激し合う場所として付された名称だろう。ここにもまた「東京」などとは違う個性が見出だせる。今回の第二次審査対象となった残り5点も、それぞれの場所性を読み取った、志の高い作品だったことが、そんな思いを強くさせる。
令和7年度 | 第68回大阪建築コンクール入賞発表 |
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令和6年度 | 第67回大阪建築コンクール入賞発表 |
令和5年度 | 第66回大阪建築コンクール入賞発表 |
令和4年度 | 第65回大阪建築コンクール入賞発表 |
令和3年度 | 第64回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成30年度 | 第63回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成29年度 | 第62回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成28年度 | 第61回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成27年度 | 第60回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成25年度 | 第59回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成23年度 | 第58回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成22年度 | 第57回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成21年度 | 第56回大阪建築コンクール入賞発表 |
株式会社IAO 竹田設計 | 岸下 和代 | 濵田 徹 |
あけぼの住研有限会社 | 岸下 秀一 | 株式会社原田彰建築設計事務所 |
ATELIER-ASH | 岸下 真理 | 株式会社ピアレックス・テクノロジーズ |
株式会社アトリエ天藤 | 木原千利設計工房 | 藤田 忍 |
生山 雅英 | 越井木材工業株式会社 | 水谷 敢 |
今井 俊夫 | 榊原 節子 | 株式会社三菱地所設計 |
株式会社インターオフィス | 修成建設専門学校 | 森村 政悦 |
上田 茂久 | 須部 恭浩 | 山城 健児 |
岡﨑 雅 | 田中 義久 | 横田 友行 |
岡本 森廣 | 辻井 光憲 | 芳村 隆史 |
織部製陶株式会社 | 株式会社徳岡設計 | 米井 寛 |
有限会社家倶家 | 中島 薫 | 株式会社ライト・ストリート総合計画 |
岸下 愛子 | 株式会社ノザワ関西支店 | 竹原 義二 |
中嶋 節子 | 大阪府住宅まちづくり部 堤 勇二 | 森田一弥建築設計事務所 |
金森 秀治郎 | 越智 正一 | 樫永一男建築研究所 |
都窯業株式会社 河原輝雄 | 長谷川 総一 |